――そして、KO-D無差別級王座V6達成後のリングで「青木さんとDDTの一番のベルトをかけて試合がしたいです」と次期挑戦者に青木真也選手を指名。8.25後楽園大会での次の防衛戦が決まりました。青木選手に対して上野選手の特別な想いがあるのでしょうか?
上野:もう、めちゃくちゃ特別です。青木さんはプロレスラーであり格闘技選手。 スポーツでも競技者というだけではなくて、芸事をしている人間。
僕に唯一、「プロレスラーのあり方」を示してくれたのは青木真也で、他にはいないです。プロレス技術とかではないですが、僕の「プロレスラーとしてのあり方の師匠」が青木真也。僕が目指すべき人というより、目指すべき“モノ“ですね。目指すべき”モノ“を持っている。
――立場的に指名できる選手の選択肢は多いとは思うのですが、どうして青木選手を指名したのでしょうか?
上野:僕が前チャンピオンのクリス・ブルックスからKO-D無差別級王座を獲ったのが2023年11月12日の両国国技館大会。同じ両国で今年7月、MAOちゃんと戦って、結果的に勝つことができた。
その7月の両国までの間に、「DDTってこんなにおもろいんだぞ!」って実感したんです。強さも面白さも感動もハチャメチャ加減も、豊かな人間性や高い人間力がいっぱい存在するDDT 。
それなのに、チャンピオンとしての僕の見え方や伝わり方が「強さ」だけになっていたように感じました。でもDDTの魅力はもっといろんなものがごちゃ混ぜになっている部分にある。
8.2新宿FACE大会で「いつでもどこでも挑戦権」が2年ぶりに復活したように、「いろんなものをごちゃ混ぜにできるのがDDTだ」っていうのを僕は見せたかったんですよ。
だから、そのためにずっと僕は過ごしているし、それが僕のチャンピオンとしてのあり方であり、DDTを背負っている男としてのあり方だと。
ただ僕はKO-D無差別級王者。対戦相手とベルトを賭けて戦えば「KO-D無差別級選手権試合」として成立する。それで防衛戦を重ねてきたけど、たまたま僕が勝てただけで挑戦者と僕の力の差はほとんどなかった。僕との対戦を通して挑戦者の素晴らしさが証明されただけ。
僕のやりたいことはやれていたと思うんです。結構、満たされてしまっているというか。僕がチャンピオンになる前から志していたものは、もうやれたと思うんですよ。
チャンピオンとして一番やらないといけないことは、このDDTを人に見せ続けること。DDTをもっと大きくしないといけないし、DDTという器に詰まっているものも、さらに大きくしなければいけない。
今、僕が満たされていると感じるなら、 リスクを背負って、僕が誰よりも尊敬している強くて怖い青木真也と対戦することで、自分の器が大きくなったりするんじゃないか、と。