【プロレス 岩本煌史(後編)】プロレス復帰して毎日が楽しい。今だから言えますが、正直辞める年は楽しくなかった。

岩本 煌史(いわもと こうじ、1990年3月20日生まれ)、三重県出身。学生時代に柔道を経験し、2012年スポルティーバエンターテイメント入門。2017年全日本プロレスに移籍、2021年末をもって全日本を退団。プロレスラー活動の休業を発表し、パーソナルトレーニングジム開業を手掛ける。今年5月プロレス復帰を宣言し、現在フリーランスでプロレスラーとジム運営との二刀流で活躍。

――5月の一時復帰から6月本格復帰戦を経て、その後他のインディ団体などにも参戦され、そして9.8代々木大会、19か月ぶりの全日本のリングはどうでしたか。

岩本:まずリング上から周辺を見回したとき、お客さんの顔ぶれが違っていて「全く変わっているな」と思いました。

多分僕のことを知っている人はほとんどいないんじゃないかと、そんな気がしました。パッ見た感じですけど。僕、視力良くないので、そんな遠くまで見えないんですけどね。

――9.8代々木大会で19ヵ月ぶりとなる全日マット登場が実現した岩本選手に会場が割れんばかりの大歓声が響きました。やっぱりみんな岩本選手を待ちわびていたんだと感じました。

岩本:なるほど、なるほど。全然僕それは知らなかった(笑)。でも、 いま振り返ってみれば約1年半休業していましたけど、当初は無期限だったので。

プロレスから離れた無期限休業のレスラーをいつまでも待っているというのは、なかなか凄いことだと思います。やっぱり離れていく人も多かったのでね。

だから今試合をして、観たことない方が会場や売店に来てくれて嬉しいですよね。僕の試合を観て、何かを感じて来てくれるんだなと感じます。

――岩本選手の過去のジュニア戦では、ピリついた緊張感のある試合が多かった気がします。

岩本:それが僕のプロレスのあるべき理想の姿だったし、それを僕が体現しようとやっていました。そのスタイルを100人中100人全員が好きじゃないように、嫌いな人もいたと思います。

でも休業前の自分は、めちゃめちゃ気にして、「みんなに好かれよう」と頑張っていた部分もあったんです。休業して、ジムに軸足を置いて嫌な思いもたくさんしてきたので。

――活動する拠点がプロレスとジムの2つになった。それで考えが分散し、あまり気にしなくなったという事ですか?それとも俯瞰的にプロレスを見ることができるようになったのでしょうか?

岩本:どっちもありますね。あと、嫌いな人を無理やり振り向かせる労力よりも、 好きでいてくれている人にもっと好きになってもらった方がいいなと思って。その方が好きな人はもっとハッピーだろうし、自分も嫌な思いしないだろうと考えました。

――プロレスから一時離れて、人間的にも成長をされたのでは?

岩本:そうだと思います。すごく嫌なこともいっぱい経験した。理想と現実が違いすぎて、人生初めて胃カメラ検査しに行ったくらい病みましたね。

――プロレスではなくて、ジムで?

岩本:最初、ポケットティッシュにジムオープンのチラシ入れて駅前で配ったんですけど、配っているやつがプロレスラーだとか元世界ジュニアヘビー級王者だって、誰も知らないんですよ。

通行人は僕のことを誰も知らない。 だから自己過信になりすぎているなって痛感しました。

それで、「なんか気にしすぎじゃないか?」って。元々気にしすぎる性格ではあるんですけど、「まあ、いいかな」とオーウェル思考でストレス溜めないように心掛けています(笑)。

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