――現在はシダックスから組織委員会に出向という形で勤務されていますが、今後はどのようなことを?
杉本:オリンピックという大きなイベントを経験させて頂いているので、それをシダックスに還元したいですね。あと個人的には野球に関して携わっていきたい。素晴らしい先輩たちに教えてもらったことを子供たちに伝えたいです。
ピッチャーの理想像って大谷翔平選手のようにスピードもあり変化球のキレも良い、コントロールも素晴らしいという選手です。でも大谷選手レベルじゃなくても、「プロ野球で活躍できますよ、メジャーにも行けますよ」という選手は、実はたくさんいるんです。
たとえば、サイドスローやアンダースローに代表される変則ピッチャーは140km/hでなくても十分プロ野球で活躍できる選手も多くいます。
世の中の流れで、高校野球に投球制限というのが設けられます。プロなんかは「先発・中継ぎ・抑え」という役割がある。野手は脚のスペシャリストがいる。
「このピッチャー、スピードは130km/hだけど打ちにくいよね」とか「どうしてもタイミングがズレちゃうよね」という投手が、監督の立場からすると必要になっていると思うんですよ。監督目線で考えた時に変則ピッチャーって欲しい。でもそれを教える術がないんです。
例えば150km/hを投げる先発オーバースローのピッチャーでも、7.8回まで進むと打者もボールのスピードに目が慣れてきます。
そこに中継ぎで120km/h前後を投げるアンダースローのピッチャーが出てきたら、打者は間の取り方やバットの出し方等タイミングが崩され、内野ゴロになっちゃう可能性が高いんですよ。
そして最後、抑えピッチャーが160km/hを出したら、タイミングが合わず打者は打てないです。
定期的にシダックス野球部のOB界もあるので、現在も野球界に携わっている方と話をしています。OBの中には有名高校の監督をしている方も沢山います。そこで監督の考えを聞いたり意見交換をすると「変則ピッチャーは欲しい」と、みんな口にするんですよ。言い方が悪いですけど、そういった需要は確実にあると思います。
ただサイドスローやアンダースローになるピッチャーって「自分は上投げだと大成できないな」と思って変則ピッチャーになる選手が多い。そこで問題になるのが投球フォーム。みんな独学でやり始めるんです。そうすると面白いくらい同じ投球フォームになります。で、ボールもシュートボールしか投げられない。そこを教える技術というのが、経験値でしかないと思っています。