【DDTプロレス 上野勇希】DDT UNIVERSAL王者としての責任(前編)

――6人タッグの坂口さんとの戦いで、次の試合を考えずにぶつかり合って敗れた。しかし次の瞬間、またスイッチを切り替えて向かっていく上野選手の姿は本当に勇気をもらいました。

上野:あの時だから出来たわけで、今そのことを想像しても「頭おかしいな」と思いますね(笑)ただレスラーなので、お客さんの応援を感じたら頑張れます。

 もしそれが無観客だったら、モチベーションを上げる別の材料を見つけるかもしれないですが、後楽園ホールでセミファイナル・メインイベントの試合、お客さんもなかなかプロレスを観られない状況にある。そしてタイトルマッチ、僕たちも掴み取らなければいけないものがある。相手に立ち向かう条件は多かったと思いますね。

――いろいろなものを背負いながらの2試合でしたね。そして翌月、11.3大田区大会はクリス・ブルックス選手の持つDDT UNIVERSAL王座に挑戦しました。あの試合を振り返っていただけますか?

上野:クリス・ブルックス選手は世界でも有名なレスラーです。もちろんDDTに来てもすごいレスラー。その「すごい」というのは背が高いとかフィジカルな部分ではなく、自分の持っているものを「全てぶつけてくる」という凄さです。

 ただKO-Dタッグベルトを失ったばかりで、僕にも挑戦者として捨てるものがなかったので、なりふり構わずいきました。

 その試合の前から、結果はどうであれDISASTER BOXを離れようと決めていました。タッグパートナーの吉村直巳くんが欠場することでノーチラスも活動休止。HARASHIMAさん、大鷲透さん、もちろん丸藤正道さんにも相談しました。平田さんには言わなかったんですけど(苦笑)。

 レスラーとして上に上がるために、「今何が大事なのか?」を考えていました。もちろんDISASTER BOX・ノーチラスの一員として続けても、まだまだ成長できたと思いますが一つのタイミングです。

――タッグのベルトも失って、クリス戦は背水の陣で臨んだ試合でしたか?

上野:いえいえ、伸び伸びと戦いましたね。DISASTER BOXのHARASHIMAさんや大鷲さん、平田さんや吉村くんがセコンドに付いてくれたので本当に楽しかったですね。全然追い込まれることもなく伸び伸びとプロレスが出来ました。

――試合前、クリス戦に向けて戦略は考えましたか?

上野:クリスは上手な選手で、精神的なところでも煽られ続けました。でも僕は焚き付けるなら焚き付けられた方がいい選手なので、リング上では冷静になれたと思います。

 ただクリスに対して事前に戦略を練っても、軽くいなされると考えたのでリング上で「なるようになれ」と思って戦いましたね。

――DDT UNIVERSAL王座を獲得して、精神的な面や周囲の環境等変化はありましたか?

上野:ノーチラスはKO-Dタッグ王者として約1年ベルトを保持しました。DDT UNIVERSAL王座を獲得して「より負けられない」と感じていますね。KO-Dタッグは吉村くんが居てくれたからこそチャンピオンになれた。「僕だけの実力ではない」という自信が逆にありました(苦笑)。もちろん自分に対してのプレッシャーはありましたけど。

 ただ、これがシングルチャンピオンになった時、「自分の中での言い訳が、より出来ない」。先日、岡田佑介選手とシングルマッチがありましたが、まず確実に負けられない。今までは吉村くんが居て僕が居てタッグチャンピオンとして負けられない立場だったのが、シングルマッチだと絶対に負けられない。

 それがタッグであれ、6人タッグであれ、負けてしまうと相手に舐められる。常に「お前は1人でチャンピオンなんだぞ」と自分に対してプレッシャーをかけています。

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