永原選手が思うスケートボードの魅力とは…
――永原選手が思う「スケートボードの魅力」は何ですか?
永原:「リスペクトの気持ちを忘れないこと」ですね。環境、自然、人、歴史、スケートボードと自分を取り巻く全てにリスペクトの気持ちがあります。
スケートボードがオリンピック競技になる前まで、世界に通用するようなスケートボードパークが日本には一つもなかった。
でもオリンピック種目に決まってからメチャクチャ増えました。そういう環境を整えてくれたことも感謝しています。
スケートボードってまだまだ本当に人口が少ないけど、その中でも気の合う同世代と盛り上がって切磋琢磨できることはモチベーションになります。
――競技が終わった後に選手同士でお互いを讃え合う場面を見ます。個人競技だと金メダルを取るのは、たった一人です。メダルを獲得できなかった、「悔しい気持ち」以上に「相手選手を讃えること」ができるのは、なかなかできることではありませんよね。
永原:メダルを取ることが全てじゃないと思っています。大会に出るうえでメダルを取りに行く気持ちは大切です。
ですが競技でのカッコ良さとか難易度の高いトリック(技)を決めて会場を盛り上げたり、スケーターとしてのカッコ良さをみんなで讃え合って素直に喜び合う。ある意味、カッコ良さはメダルに繋がると思います。
それにケガのリスクがある中、練習時に何度も難しい技にトライし努力してきた過程をお互いが知っている。だから相手に対してリスペクトの気持ちを持つと思います。
簡単にいうとスケーターってフィギュアスケートと一緒で試合(大会)がお披露目会です。サッカーや野球は戦いで勝者と敗者がハッキリしています。
スケートボードは個人戦。その大会に向けて今まで自分がやってきたことを披露する、「自分との戦い」です。メダルを取るか取らないかではなく、「自分に勝つか勝たないかの競技」。
他者との勝負に勝ち、メダルを与えられるのではない。全員が自分自身と戦った上で、「結果としてメダルがついてくる」という考えです。
自分がやってきた努力と同じくらい苦労をしているので、対戦相手の努力が見えるんです。
だからこそお互い理解し讃え合うのがスケートボーダーの性格なのかなと思います。
――相手の努力も苦労も手に取るように分かる。だからこそお互い認め合うことができるのですね。
永原:個人競技だから自分と向き合う時間が多い。それをみんな理解しているのではないかと思います。だからライバル心よりも尊敬の気持ちが上回ります。
<後編に続く>
取材/編集:大楽聡詞 文:黒澤浩美
取材協力/写真:株式会社SFIDA