――今でこそYouTubeで情報を発信するのが当たり前ですが、森さんは8年前から水泳教室「森隆弘塾」を発信しています。どうしてYouTubeを始めたのですか?
森:オリンピック選手の欠点の一つは「忘れられる事」なんですよ。今の小学生は北島康介を知りません。これはオリンピック選手の1番のリスクだと思うんです。
2012年、「今はYouTubeを見ている人が多いけど、今後は配信する側は増えていく」とビジネス界隈の方々が話していました。これを水泳で発信して行けば、スポーツ界で誰もやっていないし面白い。それに自分の泳ぎを伝えていけると。
しかし当時は、水泳業界もスポーツ業界も「自分の考えをYouTubeで流す事は良くない」と言う雰囲気がありました。今は多少考え方が変わってきましたが、以前はアメリカで学んだ技術を他人に盗まれたくないので、他の選手と練習時間をずらしたりしていました。情報の共有をしないようにと。
そういった狭い世界で動いているのが、僕は苦手でした。教えると言うことは、自分がそれ以上の意識を持たなければいけない。だったら僕はそれを教えよう、と考えました。
ただビジネスとして考えた場合、「継続」しなければならない。そう思った時、自分1人の力では続かないと思いました。話が少し逸れますが、僕がビジネスをする上で大切なことの一つは「強いチームを作る」と言う事です。
例えば、僕がホームページを作成するなら、専門的に作成している人を探して売上げを折半します。このYouTube動画に関しても編集をする人がいて、どんなことがあっても売上げは折半にするようにしています。
――とても分かりやすいシステムですね。
森:スポーツ業界全て一緒じゃないですか。コーチがいて選手がいる。それはビジネスでも同じで50/50の関係性の中でやっています。僕は水泳について話しているだけで編集担当が頑張ってくれていますよ(笑)。
――その考え方は、いつからありましたか?
森:スポーツアカデミーでイベントを行う中、僕は東京本社で企画を作りますが、他県のスポーツアカデミーの現場の方がポスター作成や集客してくれて初めて成り立ちます。だから結局「チーム」なんです。チームで動くことによって、YouTube動画の本数も1年で100本前後あげられますし。
――チームで動くと言う考え方は素晴らしいですね。普通、成功なり報酬を自分で掴むと、それを他人に渡さない人が多いですよね。
森:各分野のトップメンバーで集まった方がクオリティー高く、何より仕事が早いですからね。だから僕はやりたい事を周りに話して、手伝ってもらうようにしています。