バート・ガンvs ブラッドショー【プロレス喧嘩マッチ伝説・番外編】

「プロレスはルールのある喧嘩である」
日本におけるプロレスの父、力道山はこのような名言を残した。たしかにプロレスにはルールがあり、試合はその範疇の中で行われている。 激しい打撃戦、血生臭い流戦も、ルールに基づいて行われていれば、それはプロレスなのである。
しかし、プロレスの長い歴史の中では、その範疇を明らかに超えた試合が存在する。 それらの試合を「喧嘩マッチ」と呼ぶ。2022年10月27日に発売された書籍『プロレス喧嘩マッチ伝説~あの不穏試合はなぜ生まれたのか?』(ジャスト日本著、彩図社)はいまでは伝説となったそれら喧嘩マッチは、どのようなものだったのか。 その試合は、なぜ起きたのか。 試合映像や選手のインタビュー、雑誌・書籍などから65の喧嘩マッチを考察、その舞台裏に迫る!特別編として、北原光騎氏、齋藤彰俊選手、鈴木秀樹選手のインタビューを掲載している。今回、ページ数の都合上により泣く泣くカットさせていただいた試合を特別掲載。題して『プロレス喧嘩マッチ伝説・番外編』。(文:ジャスト日本)

世界最大プロレス団体の黒歴史!? 格闘技選手権「Brawl for All」
バート・ガンvs ブラッドショー
(1998年8月24日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア・コアステイツセンター/WWF[現・WWE])

世界最大のプロレス団体WWEにはかつてWWF時代の1990年代後期、ライバル団体WCWにテレビ中継の視聴率などでリードされた過去がある。なんとかWCWを上回るためにアティテュード路線と呼ばれる暴力やエロを取り入れた大人向けのプロレスに転換する。さらに〝ストーンコールド〟スティーブ・オースチン、ザ・ロックという新世代のカリスマレスラーが誕生したことにより、WCWを逆転し、世界最大のプロレス団体に返り咲いた。

そのアティチュード路線の中で生まれた新企画がなんとシュートルールでの格闘技トーナメント「BrawlforAll」開催だった。

ルールは1分3ラウンド制。ボクシンググローブを着用して闘う。10カウントによるKOで即試合終了。打撃はパンチが有効。レスリングのタックルは有効。蹴りやグラウンド状態での打撃技、関節技は禁止。3ラウンドで決着がつかなかった場合はポイントによる判定で決する。明らかな有効打は5ポイント。テイクダウン(タックルからの抑え込み)は5ポイント。ノックダウンは10ポイントとなる。要はボクシングとレスリングを組み合わせたようなルールなのだ。しかもどうやらプロレスの範疇を越えたシュートマッチだったという。

元レスリング全米学生選手権4連覇スティーブ・ウィリアムス、UFCトーナメント優勝ダン・スバーン、喧嘩が強いという噂があったボブ・ホーリー、アマチュアボクサーとしてニューヨーク州のゴールデングローブを3回獲得したマーク・メロ、酒場での武勇伝が多いホーク・ウォリアーといった強豪を退けて、トーナメント決勝に進んだのがバート・ガンとブラッドショーだった。

バートはこれまでビリー・ガンとの「スモーキン・ガンズ」やボブ・ホーリーとの「ニュー・ミッドナイト・エクスプレス」というコンビを結成し、主にタッグのスペシャリストとして活躍。トーナメント二回戦で優勝候補のウィリアムスを左フックで破り勝ち上がってきた。

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