――少し時間を戻して2021年3月のKO-D無差別級王座の試合後、樋口選手は秋山準選手の腰にベルトを巻きました。ご自身も感じているように、あの時から何かを失ったように思います。ワンピースのルフィーが戦いの中でギアを上げる瞬間がありますが、秋山選手との戦いまで樋口選手のギアを上げる瞬間をリング上で見ることができました。ただあの試合を境にギアを上げるというか覚醒する姿を見れなくなった気がします。

樋口:その通りだと思います。現状EruptionはDDTの中で目立った結果を残していない。Eruptionは坂口さん、赤井沙希さん、自分、そして岡谷英樹の4人。やっぱり自分が登り調子だった時、Eruptionの状態も良くKO-DタッグとKO-D6人タッグのベルトを保持しDDTのリングの中心にいました。

しかし自分の調子が悪くなるとEruptionの勢いが落ちたように見えるのかと感じます。もちろん坂口さんの怪我もありましたけど。

――その坂口選手は樋口選手、赤井沙希選手と組んで12.26代々木大会3カ月ぶりの復帰戦を行いました。対戦相手は鈴木みのる選手、伊藤麻希選手、クリス・ブルックス選手。鈴木選手と伊藤選手は対戦するのが初めてですよね。

樋口:そうです。あの試合、鈴木みのるの凄みを感じたのと、それを操っていた伊藤麻希のしたたかを感じましたね。

――鈴木みのる選手は技が多いわけではありません。でも独特の凄みがある。レスラーの方が感じる鈴木選手の「凄み」とはなんですか?

樋口:やはり1発1発の重さですね。鈴木みのると対峙した時、今までくぐり抜けて来た修羅場の数の違いを感じたんです。それが鈴木みのるというレスラーの凄みに繋がっているんだろうと。

相撲の例えになりますが幕下と横綱が並んだ場合、明らかに横綱の方が凄さを感じるじゃないですか。それは戦った相手の数や舞台が違うからです。それに近いものを感じました。

あと鈴木みのるの場合、技の無駄な部分を削ぎ落とし一つ一つを研ぎ澄ました結果だと思います。

――なるほど、実際にリング上で戦っている樋口選手の意見は説得力がありますね。ところで今年に入り1月後半よりUltimate Tag League 2022がスタートし、岡谷英樹選手と出場しました。これまでと違い、樋口選手が岡谷選手を引っ張っていく立場にあったと思います。

樋口:これまでのパートナーは経験豊富な坂口さん、今回は若手の岡谷英樹でした。自分としては「しっかりしなければいけないな」と気持ちを引き締めてリーグ戦に臨みました。でも、「岡谷に任せても大丈夫だ」と思える場面が多かった。岡谷も自分とシングルを戦い、レスラーとして認めたからEruptionに加入した。日々、リーグ戦で岡谷の成長も感じました。だから「引張っていく」ではなく「2人でタッグリーグを戦おう」と気持ちが変化しましたね。

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