【スノーボード 五十嵐幸太】自分がして欲しかったことを選手にしてあげたい(第2回)

――コーチは技術的なことだけ教えるのだと思っていました。

五十嵐:コーチが技術的な部分のみサポートするのが理想的です。それ以外にも筋力を中心とした物理的な肉体づくりを指導するストリングストレーナー。コンディションの管理やケガの治療・リハビリなどをサポートするメディカルトレーナー。

またスキーやスノーボードはマテリアルスポーツと呼ばれています。このマテリアルスポーツには道具をメンテナンスするプロフェッショナルがいます。それ以外にジュニア選手専用のコーチがいます。たくさんの人が一つの競技に関わっているんです。

私がヘッドコーチとして行なっている作業は、まず第一にスキー連盟とのやりとりがあります。助成金をいただくものに関しては年間の事業計画を作成し提出する必要があります。

そして先ほどあげたトレーナー等の人員の配置から契約に至るまで全部行います。キチンと年間スケジュールを立てて、「どの選手をどの大会に出場させるか」。来年度の選手選考基準、ワールドカップやオリンピックの派遣基準の作成。スポーツ振興事業団から予算を頂くための事業計画、昨年度の報告、今後に向けての強化戦略プランのプレゼンテーション。レンタカーの予約から宿泊ホテルの手配に至るまで、とにかくなんでもやりますよ。

――すごいですね。1人で何人分働いているのですか。

五十嵐:特にシーズン中は気が狂いそうになります(苦笑)。

――五十嵐さんがそこまでなんでもやるのは、どうしてですか?

五十嵐:選手のためです。選手には集中して試合に臨んでもらいたい。選手のパフォーマンスが落ちないように移動手段や宿泊場所は特に気を使います。そのため私は一番汚れた仕事を一手に引き受けていますよ(笑)。

――ご自身が選手だった過去があるから、選手には集中して臨んでもらいたいでしょうね。

五十嵐:現役時代は「自分がもう1人いたらいいな」と常に思っていました。だからコーチとして「自分がして欲しかったことを選手にしてあげたい」と思います。
<第3回に続く>

五十嵐幸太 / イガラシ コウタ 宮城県出身
日本選手団 スノーボード/スノーボードクロスチーム ヘッドコーチ
実績
2001年 JSBA東北地区大会 SX 優勝
2006年 FIS ニュージーランド選手権 SX優勝
2007年 FIS 世界選手権 SX日本代表
2009年現役引退後、全日本スキー連盟コーチに就任。

取材・文/吉崎雅美
編集/大楽 聡詞
写真提供/五十嵐幸太

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