【スポーツとメンタルのコーチ 今井礼子】「将来、プロスポーツ選手を目指したい」と思った時、その思いを満たしてあげたい(第2回)

――要は「上手に泳ぐためには、赤ちゃんの時の発達発育の運動が必要」だと言うことですね。ちなみにその運動は何歳くらいまで経験すれば良いのでしょうか?

今井:環境が整って1歳から1歳半くらいまで歩けるのが一般的ですが、その間にしっかり寝返りをしたり泣くことも大事です。またよく泣くことで、胸板が厚くなるんですよ。

体幹を支える胸郭が成長していると、体幹がしっかりします。子供の成長期に合わせて中学生あたりまでは再学習すると効果が見えやすいです。

――アスリートとしてプロで活躍する選手は赤ちゃんの頃に決まるんですね。

今井:いいえ、そうとも限りません。ただ高校生から自分の筋肉を強化することで記録を伸ばした選手は、細かい動きの微調整が難しそうでした。

例をあげると「バタ足を3センチくらい大きくしましょう」と言っても、その動きができないんです。ここに発育発達の影響が表れてきます。

発育発達の機会を十分に得て成長すると、動きの微調整ができます。つまり「バタ足を3センチくらい大きくしましょう」に順応できる感覚を持っている。

運動能力の基本は「自分の腕の長さや足の長さを理解すること」や「自分の空間認知を把握する」ことが大切です。そのためには子どもの頃、いろいろな経験を積ませるために沢山遊ばせたほうが良いのです。

その遊びの一つにジャングルジムがあげられます。決められた空間を潜ったり、バーに頭をぶつけるという経験が「ボディ・マップ」を作っていくんです。

――最近はジャングルジム自体が公園から撤去されていますよね。

今井:そういう遊具も少なくなっていますね。子どもたちの成長は遊びの中からです。身体もですが心もです。「この子は、ここまでしたら怒るな」とか「この子はここまで近づいても大丈夫」という対人関係の距離感を学んでいく。ですから「いっぱい遊んだ方がいいですよ」と(笑)。

――すごく良くわかりますね。今井さんが考える「子どもの運動」は1歳前後から始めたほうがいいということなんですね。

今井:大きくなっても再学習はできますが、身体を使って遊んだ経験の少ない子どもは身体を動かす引き出しが少ないから、ちょっとした動きに躊躇してしまいます。それが5歳くらいになると周りの声が気になりだす。大人の「この子は周りに比べると走るのが遅いな」という声とか。そうなると、ますます走るのが嫌になる。だったら「そんな声が気にならない5歳以前の頃に色々遊ばせてあげたい」と考えたら、対象年齢がどんどん遡っていってしまいました(笑)。

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