――高梨選手が自分のためにプロレスをしていることを友達に伝えておきます(笑)。ところで高梨選手はデビューして18年。これまで戦ってきて印象に残っている試合はありますか?
高梨:印象に残っている試合よりも、シーンとして印象に残っている場面はあります。
例えば、DDTが新木場でビアガーデンを開催していた時、最終戦でファンも交えてお酒を飲んでいました。自分が一番後ろの席に座り周りを見渡したらお客さんと選手が本当に楽しそうにしていた。
選手もファンも笑顔で楽しそうに同じ時間を共有している。そういうシーンが印象に残っているんですよね。あとは初めてDDTが両国国技館を開催した時、DDTの手作りの電飾がありました。
大会前日の夜、今林さんらが作成したのを僕は知っている。本当に手作りで、選手・スタッフが一丸となって両国大会を作り上げた。その空間が僕は好きなんです。
DDTという団体で生まれ育ち、自分が思う「いいな」と思える瞬間がDDTにはたくさんあります。活字では伝えにくいですよね(笑)。
――レスラーの方に印象に残った試合は?と聞くと「初めてメインのリングに立った後楽園」「目標としていた選手に勝つことができた〇〇体育館」という回答を得ることが多いので高梨選手のように「シーン」で回答をしてくれた方は初めてです。
高梨:そうですか。それ以外にもたくさん印象に残っているシーンはありますよ。
DDTで初めて両国国技館大会を行った時、最初のダークマッチに出場する選手を全選手で送り出し、試合後の選手を全選手が拍手で迎える。他の競技では考えられない。
プロレスならではの…僕はDDTで育ったので「DDTならではの空気」がすごく好きですね。
でもその空気をタイやシンガポールで感じることもあります。フィリピンでも感じました。フィリピンは途上国で小さい団体、選手もつたない。
でもそんな環境でも興行のために選手を必死で集める。自国だけで足りないから海外の選手に声をかける。シンガポールやタイの選手、東南アジアの選手が集まり、ようやく興行が開催できる。
現地でのプロレス興行は大切なお祭りです。他人から見るとつたない大会かもしれない。
でもそこにエネルギーがある。それはどんなに整備された国で行われる大会よりも僕にとって好きな空気なんです。それを感じた時、「DDTならではの空気」を思い出しますね。