――香川県での生活は長いですね。
今井:そうですね。香川で結婚しましたので広島にはもどらず、香川8年目になりますね。
――今井選手はカヌー以前に競泳でも全国大会優勝しています。いつ水泳は始めましたか?
今井:癌の治療が終わり、退院した後すぐに始めました。2013年に癌が見つかり、抗がん剤治療で体力が落ち、身体もボロボロになっていました。義足生活になると行動範囲も狭くなるかもしれないという懸念もあり、意識的に身体を動かさないといけないと思いました。健常者より身体を強くしておかないと何かの時に対応ができないという思いもありました。そこで、助けを借りずに1人で出来て、環境が整っているスポーツは何かを考えたところ、水泳だと思いつき、退院した翌週にはプールに通い出していました。
――行動が早いですね。
今井:思った時にすぐに行動したいんですよ(笑)。2013年10月に退院し、翌年4月には鍼灸の学校に通うために香川に移住を決め、移住してすぐに近所でプールを探し、水泳ができる環境を作りました。水泳を始めた時「全国大会と名のつくものに出場したい」、そして「やるからには優勝したい」と考えていました。鍼灸の学校に通いながら週4〜5回はプールで泳いでいましたね。実は、そのプールで出会ったのが今の妻です。
――学生の部活なみの練習量ですね(苦笑)。
今井:「俺、なぜこんなに練習しているのだろう?」と思いながら泳いでました(笑)。2015年に開催された全国障害者水泳大会(和歌山県)に運良く出場でき50m自由形で優勝しました。「目標を達成できた!」と、その後も水泳は続ける一方、自分の中では水泳には一区切りついていましたね。
――カヌーを始めたキッカケはなんでしょうか?
今井:妻が学生時代、カヌーをやっていましたので、「カヌーやってみたいな」と妻に言うと、「学生時代の後輩が国市カヌークラブで指導をしているから連絡をした」とすぐにカヌーに環境を作ってくれました。それが2017年ですね。
最初、競技用のカヌーを見た時、「えっ、こんな(細い)ものに乗っているの?」と驚きました(笑)。「競技としてカヌーに取り組みたい」と話したら、健常者の競技艇しかなく…それは安定性が悪いため、片足がなくバランスがとり辛い私には相当危険な乗り物でした(苦笑)。カヌーを始めた頃はパラ用の競技艇があるかどうかも分かりませんでしたのでこの(健常者用競技)カヌーに乗らないと競技ができないんだと思って乗る練習をしました。当時は、周りの人は誰も健常者のカヌー競技は知っていてもパラのカヌー競技のことは知らない。そもそも競技艇のレギュレーションが違うことを知らなかったんです。
カヌー始めたのが11月で、水が冷たかった記憶があります(苦笑)。その頃は自営で鍼灸師をしていたので練習は日曜日のみ。週一の練習だと水の感覚を忘れてしまうので、競技艇に安定した状態で浮くことが出来るまで5ヶ月くらいかかりましたね(苦笑)。