――パラカヌーに出会ってから「カヌー選手として頑張ろう」と思うまで、結構時間がかかりましたね(笑)。
加治:最初はカヌー選手として頑張る気持ち以上に「恐怖」の方が大きかったです。実はつい最近まで怖かった(笑)。今でも誰かに艇を持って揺らされたり、横風が強く大きな波が来ると泣きそうになります。他の選手に「なんでそんなに怖いの?」と笑われます。多少の風や波があっても艇の向きを変えられるようになったのは本当に最近ですね(苦笑)。
私は高いところも苦手なんですよ。艇の中で足がすくむ時もあります。レース中はほとんど感じることはありませんが、悪天候で中止かどうか分からない時はドキドキします。
――東京2020パラ大会は、雨が降り向かい風でした。波も穏やかな状態ではなかったですよね。
加治:横風でなければ自分は大丈夫です。追い風よりも向かい風の方がタイムは出ませんが、艇は安定します。向かい風だと他の選手もタイムを落とすので、自分にとっては有利だと思います。
――加治選手はレースの状況を客観的に分析している選手だと思います。以前車いすマラソンをしていた経験が役に立っているからでしょうか?
加治:他の選手も同じだと思いますよ。合宿中のタイムトライアルをしている動画や海外遠征した際もレースをしている自分の動画も必ず確認し「どういう条件の時にどんな漕ぎができるか」というのを各選手チェックしていると思います。
――話は変わりますが、レース前に加治選手が必ず行っていることはありますか?
加治:レース前はテレビ電話で息子と話すことと「いつも通り」を心がけるようにしています。かなり緊張するタイプなので、朝ごはんが喉を通らないとか日常茶飯事。ですからそれすらも「いつも通り」だと思うようにしています。いつも通りのストレッチやウォーミングアップをすること、あとは好きな音楽を聴いてリラックスしています。
――どのような曲を聴くのですか?
加治:元々は平井堅さんが好きでファンクラブにも入っています。それとカラオケが好きで優里さんの「ドライフラワー」とか歌います。優里さんの曲で特に好きなのは「ピーターパン」、負けず嫌いが全面に出ている曲。自分を鼓舞する時に聴きますね(笑)。