東京2020パラリンピック カヌースプリント女子カヤックシングル(KL3)の日本代表。前編は東京パラリンピックの振り返り、左脇腹の痛みを抱えながらレースを行ったことや選手村で感じたこと、今後について話してくれた。後編はカヌーを始めた経緯から家族・趣味について様々なことを伺った。
――カヌー競技を始めたキッカケを教えて頂けますか?
加治良美(以下 加治):中学2年生で怪我をしてから10年以上32歳前後まで車いすマラソンをしていました。上を目指して練習していた時や趣味の一環として取り組んでいた時期もありました。ある時、子供を出産して岐阜の市民マラソン大会に出場し優勝しました。その大会を岐阜県カヌー協会の方が見てくれました。それが2014年です。「2016年のリオからパラカヌー競技が正式種目になる。岐阜からもパラカヌーの選手を出場させたい。パラカヌーやりませんか」と誘われたのがキッカケですね。
――その話を聞いて、すぐに競技を始めたのでしょうか?
加治:その市民マラソン大会も子供を産んで「スポーツやりたいな。でも厳しいかな…」と感じていながらの復帰戦でしたし「スポーツは趣味でやるのが限界かな?」とも思っていました。しかしパラリンピックというものに対して「目指していいのか?」「目指してみたいな…」と感情が揺れ動きましたね。ただ最初カヌーと聞いた時はレジャーで乗るような簡易的なカヌーを想像していました。でもよくよく話を聞いていくと、最初は慣れるためにレジャー用のカヌーで練習するけど、競技用のカヌーの艇は細くてバランスが取りにくくて水の中に落ちるのが当たり前…というのが分かってきて、正直「エラいものに手を出してしまった」と思いました(笑)。
――僕はカヌー競技用の艇の細さを見るたびに「絶対に乗れないな…」と感じます。
加治:怪我する前は泳ぎが好きでしたけど、怪我をしてから泳がなくなりプールが遠い存在になっていました。水の中に落ちたら怖いなぁ〜という恐怖心もあり、「自分に合ってないスポーツを選んでしまった」と今でも感じることがあります(苦笑)。
――実はカヌー選手に「競技用カヌー漕いでみたい」と相談した時、「カヌー艇に乗って水の上でバランスを取るだけで2〜3ヶ月かかりますよ」と諭されました(苦笑)。
加治:最初私はレジャー艇で約2ヶ月練習しました。そして国内にパラカヌー用の艇がなくて健常者が使う補助艇で練習をしていましたが、「これに乗ってレースは出られない」と諦めていましたね(苦笑)。その後、国内にパラカヌー用の艇が入ってきました。それは健常者用より艇の幅が広かったので「これなら大丈夫かも…」と思いました。