
今井礼子さんの夫、航一さんは東京2020パラリンピックのカヌースプリント男子VL3日本代表選手。航一さんをカヌーに導いたのは他ならぬ今井礼子さん自身。彼女の活動は多岐にわたり、30年前から指導者としての活動をスタートさせた。約20年前に水泳教室「ひまわり運動ひろば」を設立、出張レッスンやメンタルコーチとしての指導、保育士・スタッフ・保護者向けの講演会や勉強会、そして日本パラスポーツ協会公認のパラスポーツコーチの資格を所有、障がいの有無に問わず多方面で活躍している。
高校一年で学年別全国制覇!しかし無理がたたって…
今井さんはカヌーで全国高校選手権大会(現インターハイ)や国民体育大会の全国大会を何度も制覇していた強豪校・香川県立高瀬高等学校出身。高校一年の夏、学年別全国大会で優勝したが、無理がたたって椎間板ヘルニアに。
「20~30年前、一般的に学校の部活動で怪我をした生徒に顧問の先生が寄り添うようなことは少なかったんです。完全に“怪我は自己責任”、選手は相談する相手がいないので孤独になります。自分と向き合いつつ他の部員の手伝いをしている中で、ふと“自分は選手よりサポートする側が合っているのかも”と思いました」
その後、怪我が回復し高校三年の大会に焦点を当てて練習を再開。高校二年生最後の全国大会で個人4位入賞。「これから自分の状態を上げていけば三年生で目標である1位に手が届く」と明るい将来を想像していたが、突然身体が悲鳴をあげた。
「久しぶりに病院に行ったら『ヘルニアが悪化しており、競技者は諦めた方がいい』と医師に言われました。それで以前から考えていた『選手をサポートしたい』という気持ちが一気に高まりました」
今井さんは気持ちを切り替え、選手をサポートする側としての道を志し、スイミングスクールのコーチをしながらスポーツに関係する様々な資格を取得した。
夫の航一さんと出会ったのもプール。彼は週4〜5回練習に通い全国障害者スポーツ大会の水泳競技に出場し50m自由形で優勝、水泳競技に一区切りつけた航一さんがカヌー選手になるのを今井さんが後押しした。