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IWGPジュニアヘビー級王座獲得とBOSJ制覇、ヘビー級転向
――メキシコから帰国し2007年12月に田口隆祐選手からIWGPジュニアヘビー級王座を獲得。2008年6月にBEST OF THE SUPER Jr.を制覇。その後ヘビー級に転向し2008年8月G1 CLIMAXに初出場しました。
井上:ジュニアの戦いと違ってヘビー級の戦いは一発一発が重くて、痛くて、体の芯まで響いて。ジュニアとは違う刺激がありました。私がジュニアにはジュニアの良さがあり、そのあとにヘビー級の闘いを経験したからこそ、「これがヘビー級か」と。これも刺激的でした。
――2008年のG1 CLIMAXでは中西学さん、ジャイアント・バーナードに勝利しましたね。
井上:少し話が逸れますが、私はプロレスラーを引退した後、ある高校で「プロレスラー」という職業について授業したことがありました。そこにはプロレスを初めて観る子もいるし、もともと興味がない子もいるだろうと考えました。私は授業の最初にインパクトのある映像を使って、みんなをこちらの土俵に引き込みたいなと。
そこで選んだプロレスシーンは、私が相手から滅茶苦茶にやられているものにしました。見た目が強烈な選手にやられる私を生徒さんに観てもらい、「なんで私がこんな痛い思いをしてもプロレスラーでいたか?」を授業で話しました。
――ちなみにそのシーンは?
井上:ジャイアント・バーナード選手が私をエプロンサイドにパワーボムをするシーンです。
――そんなにすごい衝撃だったのですか?
井上:人には目玉を動かす筋肉が眼球についています。私はバーナードのパワーボムの衝撃で眼球についている束の筋肉が張力でビョンビョンと伸びたり縮んだりしました。眼球が飛び出そうになりました。これで伝わりますか(苦笑)。
――バーナード選手は201cm163kgの巨体、文字でも凄さが伝わります(苦笑)。2010年5月、永田裕志選手とのタッグでIWGPタッグ王座を戴冠、同年G1 TAG LEAGUEを制覇。
2009年9月から永田さんが青義軍を立ち上げ、スーパー・ストロング・マシンや平澤光秀と共にケイオスと戦いましたね。ただ2013年に「頚椎椎間板ヘルニア」と「右変形性肩関節炎」が発症し長期欠場。
医師から首にメスを入れるかどうか選択を迫られましたが、別の方法を模索しました。どうしても私は首にメスを入れる判断はできませんでした。その後ヨシ・タツ選手や髙橋ヒロム選手が首を骨折しても復帰する姿を見て素直に感動しました!
――2014年4月2日後楽園、「Road to INVASION ATTACK 2014 ~井上亘引退記念大会~」が行われました。
井上: 2014年2月に引退を発表。欠場する時に「中途半端な回復では復帰したくない」と思っていました。ただ2月に引退を発表した後楽園のリング上で感情が溢れ出て泣いてしまいました。その反動で4月の記念大会は笑顔で終えることができました。
今まで全国にいらっしゃるたくさんの方々に応援していただいたので、キチンとした形でお礼を伝えたかった。その場を作ってくれた会社にとても感謝しています。
<後編へ続く>
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プロフィール【井上亘】
1973年8月27日、東京都生まれ。180cm。1999年10月10日、新日本プロレス後楽園ホール大会でのvs柴田勝頼戦でデビュー。2007年7月、単身でメキシコへ。同年11月国内復帰、12月田口隆祐を破りIWGPジュニアヘビー級王座を初戴冠。2008年6月、BEST OF THE SUPER Jr. を初制覇しヘビー級転向。同年8月G1 CLIMAX初出場を果たす。2010年5月に永田裕志とのタッグでIWGPタッグ王座獲得。同年G1 TAG LEAGUE優勝(w/永田裕志)。2013年3月、「頚椎椎間板ヘルニア」及び「右変形性肩関節炎」の負傷で長期欠場を発表。2014年2月、レスラーとして最低限のトレーニングができないことから引退を発表。同年4月2日後楽園ホールで15年間のプロレス人生に終止符を打った。引退後は新日本プロレスの社員として広報宣伝部&興行事業部で活躍。彼が力を入れている「TTGC(=The Third Generation Club)」はプロレスラーから直接トレーニングを受けられる。オンライントレーニングでは全国各地から参加者が集う人気のプログラムだ。
<インフォメーション>
今後のTTGCのオンライントレーニングの詳細は新日本プロレス”The Third Generation Club”WEBサイトをご確認ください
井上亘 X
取材・文/大楽聡詞
写真提供/新日本プロレス