――長与さんに憧れて全女に入門したのに、ヒール軍団「ジャングルジャック」に加入したのはどうしてですか。
伊藤:実は同期の平成元年組全員で全女を脱走したことがありました。新しく後輩が入ってきて、その子たちの失敗は全部私たちの責任にされ、いつも先輩に怒られていました。すごく辛くて、同期の1人が辞めたいと言い出した。同期はすごく仲が良かったので、その子が逃げると言った瞬間「みんなで脱走しよう」って決めたんです。
プロレス巡業先の体育館で、旅バッグの中から財布と鍵だけ持って、全員ダッシュで逃げました。街のどこかの事務所に駆け込み「タクシーを呼んでください」と頼んだら駅まで送ってくれました。近くの駅に着くと「足が付く」と次の駅までタクシーで行き、そこからみんな電車で帰り、事務所直行し「やめます」って全員で言いました。
会社側から「翌日、話しに来い」と言われ、次の日会社に行ったらそのまま車に乗せられて、試合会場に連行されました。そこからは地獄の日々。
私たちがしたことは、プロとしては絶対にしてはいけないこと。すでに試合が入っていた子もいた。それが全部キャンセルになってしまった。それから試合を組んでもらえないし、試合をさせてもらえない状況に。 昔は会社の人も先輩たちの味方だったし、レフェリーからも怒られ味方は誰もいない。全女の新人時代は本当に地獄でした。
でもジャングルジャックの先輩たちだけは、会社に戻された時に「あんたたち、入んな入んな」と控え室に入れてくれたんです。その頃、ジャングルジャックにはバイソン木村さん、神谷美織さん、高橋美華さん、あとアジャ様(アジャコング)がいました。
団体とガチ喧嘩をしていて、控え室もすごく離れている場所にありました。ジャングルジャックの先輩たちの中には「私たちもわかっていたのに助けてあげられなくてごめんね」と泣いてくれた方もいました。
それもあって、会社からジャングルジャックに加入を勧められました。その頃、ユニットへの加入は私たちの意向など関係なく会社が決めます。渡辺智子やバット吉永は見た目だけで獄門党に加入させられました。
後々聞いた話によると、その当時ジャングルジャックは獄門党とガチの争いをしていて、最終的に山元真由美か私のどちらかが入ることとなり、闘争に巻き込まれても“壊れない子”ということで私が選ばれたようです(苦笑)。