カヌーポロの技術向上のため、高校3年間は水球部に所属した木村亮太選手
第6章:シュートは「決めたい」ではなく「止められたくない」
――木村選手は、世界の屈強なディフェンダーにマークされ、絶体絶命の体勢からでも信じられないようなシュートを突き刺します。コンタクトスポーツにおけるその卓越した発想はどこから来ているのでしょうか。
木村:相手ディフェンスが「この体勢に追い込めば、流石にシュートは打てないだろう」と油断しているとしたら、まさにその体勢から打つからこそ、相手の意表を突いてゴールネットを揺らすことができる。
よく周囲から「変わっているな」と言われるのですが、私はシュートを打つ時に「ゴールを決めたい」と思って投げてはいません。

――「決めたい」と思って投げていない?では一体どのような思考でシュートを放っているのですか?
木村:私の思考は、「相手キーパーにシュートを止められたくない」です。
カヌーポロのゴールは1.5m×1mの四角形なのですが、それに対して守るキーパーが掲げるパドルのシャフト(柄)やブレード(水掻き)は、せいぜい数センチ、数十センチの障害物でしかないんです。
つまり、相手キーパーが差し出してくるパドルをかいくぐり、空間の隙間にボールをぶち込めば、物理的にシュートは入るんですよ。
だから私はゴールを細かく狙うというよりは、ゴールを大きく左右の半分に分けて捉え、相手の動きの逆を突く。
相手が「こういう手の動きをしたら、パドルをここに掲げてくるだろう」という守備のリアクションをあらかじめ予測し、私のフェイントや身体の動きで先に相手のパドルを振らせておいて、その空いた瞬間のスペースに弾丸を撃ち込むんです。
――相手のリアクションを完全にコントロールした上で隙を突く。まさに水上の心理戦であり、緻密な戦略ですね!
木村:圧倒的な球速やパワーを持つ海外選手たちに、真っ向勝負では敵わない。そのネガティブな現実から出発しているからこそ、辿り着いた究極の変化球なんです。
<後編に続く>
プロフィール
木村亮太(きむら りょうた)1992年3月28日(34歳)千葉県出身。168cmの小柄な体型ながら、卓越した戦術眼と強靭な体幹を武器に活躍するカヌーポロ日本代表キャプテン。幼少期にカヌーを始め、ジュニアオリンピックで優勝。高校時代はボール技術と身体の軸を鍛えるため、あえて水球の強豪校・千葉県立幕張総合高等学校に通った異色の経歴を持つ。カヌーポロ復帰後はU-21時代を含め通算5度の世界大会得点王に輝き、第73回(2024年度)日本スポーツ賞 優秀選手を受賞。全日本選手権MVP 日本人最多6回。競技普及のための法人設立やカヌー教室の講師も務めるなど、人生を賭けて「真のプロ選手」としての道を切り拓いている。
編集/まるスポ編集部
写真/本人提供
